薬屋のひとりごと 青い薔薇はどう咲いた?温室・白い花と猫猫の仕掛け
※本記事には広告・PRが含まれます。
この記事の結論
- 白い薔薇に色水を吸わせ、花びらを内側から染めた。
- 本当の難題は、園遊会までに季節外れの蕾を用意することだった。
- 蒸気小屋・多数の鉢・夜の温度管理に加え、皇帝への事前説明も行った。
青い薔薇の仕掛けで意外だったのは?
投票するとみんなの結果が見られます
猫猫が用意した青い薔薇は、青い花を咲かせる新品種ではない。白い薔薇に色水を吸わせ、花びらを内側から染めたものだ。ただし、依頼を解く難しさは着色だけにあったわけではない。園遊会までに、まだ季節の来ていない薔薇を育てる必要があった。
以下は日向夏による作者公開Web版、宮廷編1「十四、青薔薇前編」「十五、青薔薇後編」の描写をもとに、準備・栽培・着色・披露の順で整理する。後編までの結末に触れる。
依頼には「青」と「季節外れ」の二つの難題がある
壬氏が持ち込んだのは、昔は宮廷に青い薔薇があったという話だった。最初は一人が言い出したことだが、尋ねると複数の証言が出たという。その珍しい花を、翌月の春の園遊会で見せてほしいという依頼である。
猫猫が引っ掛かったのは、色より先に期限だった。薔薇が咲くには少なくとも二か月以上先なのに、園遊会は翌月だ。白い花を染める方法を知っていたとしても、加工する花そのものが手元にない。ここを解かなければ、青色を作る知識は使えない。
壬氏は開花時期を知らず、無理なら断ろうとする。猫猫は、話を持ち掛けたのが軍師ではないかと尋ね、羅漢の関与を察する。それまで消極的だった猫猫が引き受けたのは、単に壬氏の頼みを断れなかったからではない。自分を困らせようとする相手に、逃げてばかりいるのも腹立たしいという反応が描かれている。
猫猫は試してみると答えた上で、必要な物と場所を壬氏へ求めた。知識を思い出すだけでは実現せず、宮廷内で準備を進める段階に入る。
水晶宮の蒸気風呂を、花を育てる設備へ転用する
猫猫が借りたのは、水晶宮にある蒸気風呂だった。以前、梨花妃の治療のために造らせた設備で、今回は風呂をそのまま鉢置き場にしたのではない。蒸気が流れ込むよう、庭に別の小屋を設けている。
小屋には大きな窓があり、天井にも大窓が付いていた。蒸気で空気を温めることと、できるだけ日光を当てることを両立させる造りである。
壬氏を通じて梨花妃の了解を得て、小屋を造る費用も壬氏が出した。猫猫は場所の使用を頼むだけでなく、梨花妃が喜ぶ贈り物も用意している。作業場所を確保する交渉も、栽培前の準備に含まれていた。
百を超える鉢と早咲きの品種で、失敗の可能性を分散する
運び込まれた薔薇は一鉢や二鉢ではなく、百を超える数だった。これだけ大量に用意したのは、花瓶を豪華にするためだけではない。猫猫自身が、すべての鉢に蕾が付くとは考えていなかったからだ。
暖かい場所を作っても、一か月あまりで確実に咲く保証はない。そこで鉢の数を増やし、できるだけ早咲きのものを選びながら、品種も一つへ偏らないようにした。数を増やす工夫と、異なる品種を混ぜる工夫が組み合わされている。
品種を分ける準備は、一種類の反応が遅くても、別の鉢から蕾が育つ可能性を残す工夫と読める。ただし、各品種の成功率や必要な温度が数字で示されているわけではない。
選んだ花の色は、すべて白だった。披露された花が赤・黄・桃・青などに分かれていても、最初から各色の薔薇を集めたのではない。白い花を共通の材料にすることで、育てる段階と、見せる色を作る段階を分けられる。
昼は日光、寒い夜は焼石――温度管理が猫猫を消耗させた
蒸気を流す小屋を建てた後も、猫猫は放置して待ったわけではない。天気のよい日は鉢を外へ出して日光に当て、霜が降りるほど寒い夜には、焼石へ水を掛けながら小屋を温め続けた。園遊会が春でも、夜の冷え込みはまだ残っている。
壬氏から宦官を数人回してもらったものの、微妙な温度調節は猫猫が担当した。運ぶ作業を手伝える人がいることと、花を枯らさないよう環境を見続けられることは別だった。全部の鉢を一度に駄目にすれば、やり直す時間は残らない。
そのため、園遊会へ花を届けた猫猫は痩せこけ、桜花に付き添われて休む状態になっていた。青い色を作る瞬間だけに注目すると、この消耗の理由が見えにくい。時間を使った中心は、季節外れの花を蕾まで育てる工程である。
具体的な室温、夜ごとの加温時間、品種名は作中で説明されない。栽培の手順書ではなく、猫猫が環境を見て調整した描写として読む範囲になる。
小屋での管理には、温度以外の邪魔も入った。水晶宮の侍女たちが物珍しさから見に来るので、猫猫は爪に紅を塗って見せ、彼女たちの関心を爪紅へ向けた。侍女たちが自分の紅を探しに戻れば、花の管理へ集中できる。
さらに梨花妃にも爪紅を勧めた。寵愛を受ける妃の装いが女官たちへ広がる後宮の流行を利用したのである。
青くしたのは花の外側ではなく、茎から吸わせた色水
蕾が膨らんだ後、猫猫は白い薔薇を色の付いた水へ入れておいた。茎から水と一緒に吸い上げられた色が、白い花びらを染める。壬氏が花びらを触っても染料が見当たらなかったのは、表面へ塗り付けた方法ではなかったためだ。
種明かしでは、猫猫が薔薇を一本取り出し、茎の切り口へ指を当てる。青い薔薇には青い液体が付いていた。壬氏が最初に花を持ち上げた際にも、茎から滴が落ち、わずかな違和感を覚えている。真相の手掛かりは、披露の場面にも先に置かれていた。
猫猫が使ったのは青色だけではない。会場には黒・紫・緑まで含む色とりどりの花が飾られた。白い花を染める仕組みなら、青い花だけの特別な性質を発見する必要がない。色の違いを、吸わせる水の違いで作り分けている。
ただし、花だけが都合よく変色するわけではなかった。葉も色水の影響で黒ずむため、白い花の葉は残し、着色した花の葉は生ける際に取り除いた。茎を染め液に入れるだけでなく、披露に向く見た目へ整える処理もあった。
もう一つの細工は、一本ずつの茎の根元にあった。それぞれ色付きの濡れた綿で包み、油紙で固定して、提出の直前まで外さなかった。同じ花瓶に多色の花が集まる前には、花ごとに色水を含ませる工程があったのである。完成した花瓶だけを見ると省かれやすい、運搬と披露のための準備だ。
皇帝へ先に種明かしした理由と、成功の限界
仕掛けが分かれば、珍しい青い品種を育てたのではなく、染めただけではないかと言い掛かりを付ける者も出る。猫猫はそれを見越し、前夜に翡翠宮へ来た皇帝へ、先に方法を説明していた。
猫猫は、最初に秘密を教えられるのはうれしいことであり、何か言われても皇帝が自分から説明してくれるだろうと考えている。批判する者へ直接対抗する代わりに、披露する相手自身が仕掛けを説明できるようにしておいたのである。
原文では、壬氏はどうやら皇帝の話を聞く前に退出したようだとされる。皇帝には先に伝えてあり、運んだ壬氏は知らない。この情報のずれが、宴の後の種明かしにつながる。
一方、猫猫は満足しきっていない。園遊会の時点では、花はまだ開ききらない蕾だった。猫猫は開花に至らなかったことを残念がるが、壬氏は十分だと認める。牡丹が飾られた会場でも、季節外れで多色の薔薇は人々の注目を引いた。猫猫が目指した栽培上の完成と、期限内に人々を驚かせるという依頼の達成は、同じ評価ではない。
昔の宮廷に青い薔薇があったという証言についても、猫猫は同様に色水を吸わせた人がいたのだろうと説明する。ただし、誰が、誰のために作ったかはこの場面では確定しない。人物を特定する答えと、現象を再現できる答えを分けて読むと、謎がどこまで解けたかが分かる。
関係する人物の立場は登場人物一覧、ほかの事件とのつながりは事件一覧で確認できる。
関連するテーマ:薬屋のひとりごと 事件一覧|1期・2期の謎と犯人を整理
